後遺症による労働能力喪失期間
1 労働能力喪失期間の始期は、症状固定日です。後遺症は、被害者が亡くなるまで永続するものと考えられますが、労働能力喪失期間の終期は、就労が可能な年齢、原則として67歳までとされています。
しかし、後遺障害の症状によっては、この労働能力喪失期間が制限されることがあります。
2 裁判実務で広く利用されている通称「赤い本」によれば、むち打ち症の場合、12級で10年程度、14級で5年程度が一応の目安とされています。
このように喪失期間が制限されるのは、むち打ち症の場合、症状の影響が日常生活の中での慣れなどにより、時間の経過にしたがって改善していくと考えられているからです。
しかし、むち打ち症の症状が長期間経過しても改善の見込みがない場合にまで5年に限定するのは相当ではなく、そのような事案では慎重に喪失期間を認定する必要があります。
3 むち打ち症以外の原因による神経症状で12級や14級に該当する場合はどうでしょうか。
神経症状が痛み(疼痛)を中心とする場合は喪失期間を制限することが多いようです。しかし、脊髄損傷に伴う神経症状の場合など、その原因から神経症状の改善が容易ではない場合には、喪失期間を限定しないようです。
[2020.06.03]